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ラジオアイソトープ(radioisotope (RI):放射性同位元素)の医学利用は1950年代に開始され、今日まで病気の解明、医学知識の蓄積及び医療技術の発展に大きく貢献してきました。1960年代にこれら医学的知識と技術を基に放射性医薬品が開発され、現在までの半世紀余りの間、多くの体内用および体外用の放射性医薬品が医療の現場において活用されています。
体内用放射性医薬品は、体の重要な臓器の血流・代謝・受容体などの生化学的な働きを確認することができる、短い半減期のわずかな放射性核種で標識したトレーサー化合物です。がん・脳血管性病変・循環器病・呼吸器機能・神経変性疾患の異常を診断でき、他の画像診断では得られない重要な情報を提供できることが大きな特徴であります。
体外用放射性医薬品は、患者さんから採取した血液や尿の中に含まれる微量な生体物質の量を、当該生体物質に結合や反応する化合物をRI標識したものです。非常に高感度な放射能測定技術にて測定することで、受容体結合性、酵素活性など、様々な生化学的な評価ができることが特徴であります。
体内用放射性医薬品においては、近年、新たな技術の臨床応用が実現しつつあります。その1つは、認知症分野におけるPET診断薬です。認知症はこれまで症状に基づく診断が主でしたが、アルツハイマー病の原因の1つとされる神経科学的な病態の診断がPET診断薬によって可能となったことで、その病態に基づく治療を適切に選択できるようになることが期待されています。特に、アルツハイマー病の疾患修飾薬の臨床使用において、非常に重要な情報を提供します。
もう1つは、セラノスティクス(Theranostics)です。治療(Therapy)と画像診断(Diagnostics)を融合させた造語であり、治療対象となる病態に特異的に結合する抗体やペプチドなどに、診断時には診断用RI、治療時には治療用RIで標識することで、診断と治療を行うことが可能となります。診断用RI標識薬剤で標的病巣への集積の有無を評価して治療用RI標識薬剤の対象となる患者を適切に選択し、かつ集積程度から治療用RIの投与量などを最適化することは、まさに個別化医療であります。特にがん領域において、治療用RIに用いるβ線やα線核種はその高いエネルギーよってがん細胞のDNA鎖を切断し、抗腫瘍効果を発揮するという、これまでの抗がん剤とは異なる作用機序であるため、既存の治療では十分な効果が期待できないがん患者さんへの活用が期待されています。
放射性医薬品は半減期という避けられない性質のため、その活用には安定供給が非常に重要であります。必要な量の診断用/治療用RIをニーズに合わせて製造・輸入し、放射性医薬品の製造を毎日行い、医療機関へ短時間でお届けする使命を安定的に果たすことが、当然に要求されます。特に、自然災害、地政学的なリスクが増している昨今では、非常に重要であります。
日本放射性医薬品協会は、医薬品と放射能の両方を同時に扱う放射性医薬品に関わる企業団体として、時世に応じ刻々と変化する医療構造や医療ニーズを的確に捉えて柔軟に対応し、ラジオアイソトープの利点を生かした放射性医薬品の開発や供給体制の整備、リスクに対応した安定供給の継続、関係法令の遵守、新しい技術に伴う使用環境の整備、などを通じて国民医療の向上に取り組んでまいります。
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